慰謝料請求しても円満離婚できる?
「夫に不倫をされて慰謝料請求したい、でも子どものために出来れば円満に離婚したい」こんな葛藤はありませんか?
この記事では、不倫をされて離婚を検討、慰謝料を請求したいけれど穏便に解決したくて悩んでいる方がより納得のいく選択をとれるよう、不倫慰謝料額の相場や実例と共にご紹介していきます。
不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料の相場
慰謝料を請求するか否かを判断する前段階として、慰謝料はどれぐらいが相場なのかを知っておく必要があります。
裁判をした場合の相場は、一般的に100万円~300万円が大半です。
ですので、なんとしても慰謝料を請求する!と考えても、この相場からかけ離れて多く取れることはほとんどないと知っておいてください。
また、慰謝料額を決めるための客観的な基準というものはありません。(この条件にあてはまったら必ず増額される、というような基準のことです。)
裁判例では慰謝料額について、「婚姻破綻に関する双方の有責性の程度、婚姻期間、当事者の年齢、未成年子の有無、経済状態、財産分与による経済的充足があるか、離婚に至る一切の経過等」を考慮して判断するとされていますが、実際には以下のような傾向にあります。
考慮要素
①有責性が高いほど慰謝料額も高い。
②精神的苦痛や肉体的苦痛が激しいほど高い
③婚姻期間が長く、年齢が高いほど高い。
④未成年子がいる方が、いない場合よりも高い。
⑤有責配偶者(不倫した側)に資力があり社会的地位が高いほど高い。
⑥無責配偶者(不倫された側)の資力がないほど高い。
⑦財産分与による経済的充足がある場合に低い。
ここで勘違いしないでおきたいのは、たとえ慰謝料額が高くなる要素が多くても、必ずしもそれが考慮されるわけではなく、またその大半は相場内で多少増額されるにすぎないということです。
慰謝料請求に関する東京家庭裁判所における事案の分析によると、慰謝料300万円以下が全体の80%弱を占めており、また、東京地裁における不貞慰謝料事件判決の分析結果においても、100万円~249万円が全体の70%を占めています。
出典:大塚正之「不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析」19頁
慰謝料請求が認められないこともある
慰謝料請求が認められないこともある
不倫されたから離婚して慰謝料請求してやる!と意気込んでも、もし裁判で争うことになれば100%慰謝料請求が認められるわけではありません。
例えば、不倫と婚姻関係が破綻したことに因果関係が認められない場合や、婚姻関係が破綻したことについて双方に責任がある場合、既に損害が補填されている場合(既に不倫相手から慰謝料を受け取っている場合)などは慰謝料を請求できません。
具体的には、不倫した事実があったとしても、その時点で既に婚姻関係が破綻していたのであれば不倫により婚姻関係が破綻したわけではなく、法律的に保護する必要はないと考えられる場合などです。
選択肢は2つ
選択肢は2つ
ここまで読んでいただいた方は、不倫慰謝料の相場感についてある程度把握できたかと思います。
それを踏まえて、ここからは、慰謝料を請求すべきかすべきでないかについて考えていきたいと思います。
望ましいのは、慰謝料を支払ってもらい尚且つ円満離婚することだと思いますが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」と、ことわざにもあるように同時に2つを手に入れようとするあまりどちらも取り逃すことは避けたいところです。
となると、選択肢は以下の2つになります。
1.慰謝料を請求する
2.慰謝料を請求せず円満離婚を重視する。
どちらかを選択するにあたり必要なことは、自分が何を優先したいのかを知ることです。
相手に左右されない
相手に左右されない
この2択のうちどちらか一方を選択するとき、何を基準に判断すればよいのでしょうか。
それは、自分がこの先どうしたいのかを明確にすることです。
結果にかかわらず、自分自身が信じて疑わない行動を取ったのであれば後悔は残りません。
これは、相手の考えや状況に関わらず、自分が優先したいことを軸に決断すればそれが答えだということです。
慰謝料請求しなかったケース
慰謝料請求しなかったケース
選択するうえでとても参考になる事例として、円満離婚することを第一優先に置き慰謝料を請求しなかった実際のケースをご紹介します。
慰謝料請求しなかったケース
慰謝料請求しようか数年悩んだ末、慰謝料請求せずに円満離婚を選んだ。
結果、元配偶者の両親と良好な関係で居続けることができた、そのおかげで子どもを預けたり必要なときに頼ることができた。
養育費は一度も滞ったことがない。
子どもと元配偶者の関係性が良好で毎週会っている。
慰謝料請求しようか数年間悩んだにもかかわらずなぜ慰謝料請求をしなかったのか、その理由に、慰謝料請求するかどうかを悩んでいる方が知っておくべき大切な考えすべてが詰まっている、そんな気がします。
慰謝料を請求しなかった理由は、「離婚すると決めて新しい人生を歩もうとしているのに、慰謝料を請求することでまた眉間にシワ寄せて負の感情に支配されながら生活する自分が嫌だ」という想いだったそうです。
自分が優先したいことは自分自身の感情の中にあり、それを軸に決断し行動したことで慰謝料とは比にならない程大切なものを手に入れられたのです。
経済的な側面から見ても、慰謝料を請求して険悪な間柄のまま離婚した場合、養育費を一切支払ってもらえないことも容易に想像がつき、一方で慰謝料を請求せず円満に離婚し養育費を支払ってもらえる関係性を作っておくことによる経済的利益の方が大きいのではないでしょうか。
なにより、子どもと離れて暮らす親との関係性を良好に保てることが最大の利点と言えます。
正当な権利
正当な権利
円満離婚することを選択した場合についてお伝えしましたが、慰謝料を請求することが悪いわけではありません。
法律上、夫婦には貞操義務(配偶者以外と性的関係になってはいけない)がありますから、それを破った配偶者に対して慰謝料を請求することは正当な権利です。
冒頭で説明したように、慰謝料相場や請求が認められないことがあることを知ったうえで、それでも自分にとっては慰謝料請求することがモヤモヤした気持ちを晴らす唯一の解決方法であり優先したいことなのであれば、慰謝料請求をする選択を取ることも間違いではありません。
ただし、一時的な感情に左右されて判断するのではなく、人生トータル的に見てどちらが自分のためであり、子どものためになるかを考えて決断することが後悔のない選択になるはずです。
まとめ
まとめ
本記事では、慰謝料請求と円満離婚の選択について解説しました。
ぜひ参考にしてみてください。